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一斗缶で自作焚き火台 燃焼効率と二次燃焼を目指して

 

 

焚き火台 イメージ

目次

一斗缶で自作焚き火台 燃焼効率と二次燃焼を目指して

 

焚き火を楽しんでいると、焚き火台の下に灰や熾きが落ちています。よく見ると我が自作焚き火台の底に穴が開いていました。数年使い込んで熱や錆びによる経年劣化のようです。

 

新しく作り直すにあたり、以前から気になっていた二次燃焼の要素をプラスしようと思いました。

 

自作焚き火台のメリットは、検証して再考できること。火の動きを見て、仮説を立て、手を加えられること。この「試行錯誤のできるところ」が自作の醍醐味と思っています。以下で解説をしていきます。

 

 

旧焚き火台

今までの焚き火台(旧)

焚き火台で迷ったら一斗缶で自作 薪が入れやすい作り方解説

今までの焚き火台は、一斗缶を半分に切っただけの単純すぎる構造でしたが、自分なりの工夫をしていました。

 

薪投入口

一斗缶の一辺は24cm。これより長い薪でも入れられるように、薪投入口を設けました。

 

側面や底面の空気孔

フツーは側面や底面にたくさんの穴をあけますが、あえて穴はあけていません。薪投入口を設けたため、そこから空気の流入があると見込んでいたからです。

 

火の動きを観察していくと、薪投入口から空気の流入を確認できます。つまり、薪投入口から空気は入るため「側面や底面に空気孔をあける必要は無い」との結論に至りました。

 

旧焚き火台 上から

上部がオープン

一斗缶を半分に切っただけの単純な構造は、煙を素早く排出しました。しかし、疑問に感じます。上空に抜けるのは良い事なのかと。

 

薪の燃焼図

木の燃焼過程とは

 

  • 熱により可燃性ガスが発生
  •  ↓
  • 可燃性ガスが酸素と反応し着火
  •  ↓
  • 火の熱により可燃性ガスが続発・着火

 

この熱とガス発生の連鎖により「火」は維持され大きくなっていくのですが、可燃性ガスを有効に発生させるには「熱」の効率的な利用が必要になります。

 

熱も未燃焼ガスも上空に逃げてしまう現状に、効率的な燃焼は見込めないなと感じていました。そこで「熱を溜め、未燃焼ガスの再燃焼を促す」装置を考えてみます。

 


 

新焚き火台 イメージ 空気の流れ

これから作る焚き火台(新)

焚き火で出る煙の中には「まだ燃え切れていない可燃性ガス」も含まれています。これに新鮮な酸素を当てて再燃焼させるのが「二次燃焼」です。市販の二次燃焼系ストーブはこの仕組みを高度に活用していますが、構造そのものはシンプル、自作でも再現可能です。

 

これから作る新焚き火台も、この仕組みに基づいた熱と空気の流れを意識して、効率的な燃焼を目指していきます。

 

設計コンセプト2点

  • 熱を滞留させる装置
  • 空気を送る通路の確保

 

熱を滞留させる装置

熱と未燃焼ガスを溜めるには、上部を閉じてしまうのが簡単です。しかし、焼肉や調理を考えると全部を閉じれないので「フチ」を残すことにしました。また、そのフチに垂れ板があれば、滞留する層が増えるのではないのかとの仮説です。

 

空気が送る通路の確保

二次燃焼用の空気は「内筒」と「外筒」の間を通ります。そこで一斗缶を半分に切って被せる構造にします。切った一斗缶の下部が内筒、上部が外筒の役割を果たします。

 


製作工程1製作工程2製作工程3

製作工程は大きく3つ

製作は大きく3つの工程に分かれます。

 

  • 工程1,一斗缶を上下に分離
  • 工程2,開口部や給気孔の加工
  • 工程3,上下を組み合わせて調整

 

 

使用工具

使用した工具

金属切断と折り返し加工もあるため、以下の工具を使用します。

 

切断工具として

  • スクレーパー
  • ハンマー
  • 園芸用ハサミ

 

折り曲げ加工として

  • プライヤー
  • 木の板

 

線引き用として

  • メジャー
  • マジック
  • マスキングテープ

 

塗装焼き切りとして

  • ガストーチ

 

切断方法

工具について

切断方法

旧焚き火台はスクレーパーをハンマーで叩いて切断したため、「ガンガンガン」と結構な音が出て近所迷惑になると思いながらの作業でした。

 

今回は近所迷惑にならないよう、百均の「園芸用ハサミ」で対策します。枝を切れるのだから、薄い鉄板ぐらいは切れるだろうとの見込みです。

 

線の引き方

通常の工作はマジックやペンで線を引きますが、今回はマスキングテープを使ってみます。

 

作業中に当てた定規のズレが多々あったのと、線を何本も引いたため、切る線なのか折る線なのか、わからなくなってしまったのです。そこで目についたのがマスキングテープ。試してみます。

 


上下分離

工程1(一斗缶の上下分離)

 

切断ラインは底から180mmとしました。一斗缶の半分は175mm、二次燃焼用の供給口と被さる上部の兼ね合いから、上部を短くしたかったのです。ちょうど缶のデザインの黒帯が180mmにあったので切断位置としました。

 

スクレーパーで切り込みを入れ、園芸用ハサミで切り進めます。切断ラインは多少曲がっても大丈夫。「折り返し」の加工で切断面が整うので「やりやすさ優先」でOKです。

 

 

工程2(開口部や給気孔の加工)

設計図 下部

2-1,薪投入口と切り口の処理(下部)

薪投入口サイズ

  • 幅160mm
  • 高さ80mm

設置位置

  • 端から40mm
  • 下から30mm

 

目印を入れてマスキングテープを貼ります。テープのフチがケガキ線になります。

 

  • テープの内側が切り取り線
  • テープの外側は折り返し線

 

マスキングテープにしたのは何本も線を引く手間を省くため。また、切り落としの結果が「テープ部が残ればOK」になるので、視覚的にもわかりやすくなります。

 

設計図 上部1

 

2-2,上部の開口部とフラップ部

上部のフラップは、熱気や未燃焼ガスを内部に滞留させる装置になります。

 

  1. 端から30mmの位置にマスキングテープ2本を貼る。
  2. 注ぎ口からハサミを入れ、テープの内側に沿って切断
  3. 切り終えたら注ぎ口のフタを締めて切り口を隠す。

 

追加:後述「フラップ部での仮説」での追加加工として、フラップ部の流出防止のために「折り返し用」のマスキングテープ1本を追加します。

 

フラップ部

2-3,フラップと切り口の折り返し

フラップ(未燃焼ガスの滞留ゾーン)

マスキングテープを基準に下方向(内側)へ折り込む。

 

追加:後述「フラップ部での仮説」での追加加工として、上記折り込み作業前に、折り返し部を半分程度曲げ、のちの追加スキマ材を挟める状態にしておくとよいです。

 

切断面の折り返し

上下に切り離した部分を折り返して処理します。

 

上下の組み合わせ

工程3(上下の組み合わせ)

3-1,差し込み準備

同じ位置で切断したので上下は同じ径。そのまま重ねることはできないので、以下のようにしました。

 

  • 上部を外側へ押し広げる
  • 下部を内側へ押し込む

 

底をへこます

3-2,上下の組み付け

上下の缶を差し込みます。入りにくい場合は、底部をハンマーで叩き、角部分を内側に倒し差し込んでいきます。

 

上部 薪投入口 施工前上部 薪投入口 施工後

3-3上部の薪投入口作成

  • 上下を組んだ状態で、下部の薪投入口の位置を上部へトレース
  • いったん上下を分離し、マスキングテープを貼る。
  • テープのフチが切り出し線と折り込み線になる。
  • 不要部分を切り離し、折り込んでいく。

 

 

空気供給口 切り出し

3-4,空気供給口

薪投入口以外の3面に、二次燃焼用の空気供給口を作ります。

 

  • 角から30mmを残す。
  • 下方向へ約10mm切り下げる。

 

当初はV字に切り込む設計でしたが、実際やってみるとV字が意外と手間がかかります。結果的に切り下げる方式にしました。

 

イメージ図 空気供給口 改良

※後述「フラップ部での仮説」で「二次燃焼を認められなかったのは供給口の高さに原因があるのかも」と仮説を立てています。V字にするのもアリ。参考にどうぞ。

 


 

火入れと調整

初回の火入れは、塗装の焼き切りと火の確認、調整になります。

 

1,塗装の焼き切り

一斗缶の塗装を焼き切るため、危険にならない程度に大き目の火にし、冷却後はウエスでキレイに拭き取ります。

※鉄板の切り口は鋭利になっています。軍手等で手を保護してください。

 

空気取り入れ口

2,空気供給の調整

上部の缶の裾は広がっています。下部に被せたときにカッコよくなるように「裾の広がり」を整えます。吸気の入口部はできるだけ広く、しかも見た目カッコよくしていきます。

 

最終的な接合

3,上下の結合

吸気部を整えたら上下を結合し、底のヘコみを外側から押し上げます。

押し上げることで側面の角がわずかに外側へ開き、上下が固定されます。

 


燃焼の観察

燃焼の観察1

1ー1,煙の滞留と二次燃焼の着火は認められない

フラップ部分に煙の滞留は起きなかった。また、空気供給口付近での着火は無かった。

 

新焚き火台のコンセプトは「空気供給口付近での二次燃焼を楽しむ」ことにありました。空気供給口付近からの着火が認められないことから、二次燃焼には至らなかったと結論します。

 

1-1-1,フラップ部での仮説

  • フラップ部の四隅にスキマがあり、未燃焼ガスが逃げた。
  • 上部の空気供給口が広すぎて、空気の吹き出しが少なかった。
  • 下部からの吸気が不十分なため、上部の給気も不十分になる。

 

1-1-2,仮説に対する改善策

フラップのスキマ対策

  1. フラップに折り返し部を加味して切り出す。
  2. 端材から四隅のスキマを埋める部材を切り出す。
  3. プラスした折り返しでスキマ材を固定する。

これで未燃焼ガスの流出が無くなり、滞留させることができます。

 

1-2,空気供給口からの吹き出し圧の強化

  • 案1,切り下げを10mm程度から5mm程度に浅くする。
  • 案2,切り下げではなくV字に切り出し、空気の流入を小さくする。

狭い口になるため押し出し圧が高くなり、より未燃焼ガスに届けやすくなると思います。

 

吸気口および通路の拡幅

1-2-1,吸気口および通路の拡幅

  • 下部の吸気口および上部にいたる通路を押し広げる。

通気量が増えることで、供給口の吹き出しが強化される。

 

炎の観察

燃焼の観察2,炎が側面に触れない。

火が側面から中央に流れるのは、給気口からの流入があることを示しています。また、薪投入口付近の火が奥へ奥へと向かうことから、空気流入の主は薪投入口からであることを示しています。

 

空気流入の主が薪投入口(側面の開口部)であることから、側面に大量の空気孔をあける必要は無いことがわかります。

 

燃焼の観察3,上下半分の合体による二重壁構造

  • 上下を被せたことで壁が二重になり、断熱効果が生まれた。
  • 吸気口から供給口までの通気による空気の層も断熱に寄与している。

 

燃焼室内の温度が高く保たれたことで、可燃性ガス発生のサイクルが向上。結果とし燃焼効率は向上していると思われます。

 

燃焼の観察4,サイズ・重量と安定性

旧焚き火台は一斗缶を半分に切っただけ、軽くて安定さに欠けていました。新焚き火台は一斗缶を半分に切って被せたので、重さはほぼ一斗缶ひとつ分。重量増加により安定性は向上しました。

 

燃焼の観察5,初回塗装焼き切り時の動画撮影

最初の火入れでの高温状態の火と空気の流れを動画で撮ってみてください。大きな火の動きを可視化できるのは、初回の塗装焼き切り時以降は、無いかと思います。良くも悪くも塗装の焼ける煙が出ていますので、この煙の動きを追うと、空気の流れが見れて良いと思います。

 

  • 煙がどのように流れていくのか?
  • 煙が下部の吸気口に吸い込まれるのか?
  • 上部の炎はどのような動きを見せるのか?
  • 上部空気供給口から空気の流入はあるのか?

 

これらを動画で撮っておくと今後の資料になるはずです。

 


作業感想と工具評価

 

工具 はさみ

1,切断作業

百均の園芸用ハサミは一斗缶切断に十分対応できました。スクレーパーできっかけを作り作業効率の向上と騒音の低減。音が静かになったのは近所迷惑にならず良かったです。また、半月刃で切ろうとすると滑ってしまいます。ストレート刃が缶に食いつきやすく、切りやすかったのは意外でした。

 

マスキングテープ1マスキングテープ2

2,ケガキ線とマスキングテープ

マスキングテープの使用は、作業効率が向上し非常に効果的でした。

 

  • 定規とマジックによる線引きの手間が省ける。
  • テープがケガキ線と折り返し線を同時に示す。

 

新焚き火台はフラップ部や薪投入口など折り返す場面があります。マジック等で線を引くと多数の線になり、何が何の線だか判断つきかねます。テープを貼ることによって、テープの内・外が明確になり、切り取り線と折り込み線も明確になりました。また、テープは数秒で貼れるため作業スピードと正確性が大幅に向上したのは言うまでもありません。

 

3,ガストーチでの塗装事前焼き

初回火入れで塗装は十分に焼き切れるため、ガストーチでの事前焼きは不要でした。

 


耐火シート遮熱材

焚き火台使用時の地面保護

焚き火の熱は思った以上に地面を傷めます。特に芝生は焦げやすく、アスファルトは熱で元に戻り、コンクリートは熱ではじけるなど、熱は地面に対して決して良いものではありません。安全に楽しむためには、地面保護の工夫が必要です。

 

ひとつの例

溶接シート(スパッタシート)が最良ですが、とりあえず百均の耐火シートで地面を保護し、鉢植えなどで地面との距離をとり、その間に熱が届かないようアルミ皿などを挟みます。これで安定性を確保しつつ、熱の影響を最小限にできます。

 

  1. 百均の耐火シートを敷く
  2. 鉢植えなどで20cm以上の底上げ
  3. 間に鉄板または厚手のアルミ皿で遮熱
  4. 焚き火台をその上に設置

 

五徳 低五徳 高

火力調整と五徳の工夫

焚き火での調理の難しさは、火力調整ができないことにあります。「火力が強い」か「火が無い」かのどちらかになり、ちょうど良い火加減は五徳で調整するしかありません。

 

材料

百均のワイヤーネット(塗装なし)

塗装付きは剥ぎ取り・焼き切りの作業が必要になるため、無塗装品を使用します。

 

作り方

ワイヤーネットを焚き火台に合わせてコの字に曲げます。

ストッパーは火ばさみや針金ハンガーでコの字やYの字にします。

高さを変えられるので、火力調整が容易になります。

 


完成図

まとめ

  • 新焚き火台の二次燃焼は現状では未達成
  • フラップ部の漏れ防止と給気孔に改良の余地
  • フラップ部と二重壁による断熱効果は認められた。
  • マスキングテープでケガキ線と折り込み線を同時表示
  • 園芸用ハサミでの一斗缶切りは問題なく作業できる。

 

以上のような改良の余地や良い点の発見がありました。これをどのように改良していくかは「あなた次第」です。

 

市販品に穴をあけたり切ったりするのは心理的に抵抗があるものです。でも自分で作ったものなら、穴をあけても切っても抵抗感が無いどころか、むしろ改良に対するワクワク感ですらあります。

 

実は一斗缶を入手するのは意外と簡単です。飲食店では揚げ油や醤油、自動車整備工場ではクーラントなどが一斗缶の容器です。企業は有料で廃棄しなければならないので、従業員に声をかければ無料で譲ってもらえます。

 

そして焚き火台は構造が単純で、DIY初心者でも取り組みやすい題材です。改良も自由自在、自作焚き火台はあなたのアイデア次第で、廃棄物を焚き火台という製品に変えてしまいます。

 

自分だけの使いやすく燃焼効率の良い焚き火台に仕上げることができるのは、自作ならではの楽しみ方です。二次燃焼に成功すれば、炎をより美しく、より長く楽しむことが可能です。工具は全て百均でそろいます。ぜひ一斗缶の焚き火台に挑戦してみてください。

 


以下は設計図になります。参考にどうぞ。

 

設計図1

設計図2

設計図3

 

 

 

設計図4

設計図5

設計図6

設計図7

設計図8

設計図9

設計図10

設計図11

 

設計図12

 

設計図13

 

関連情報

結婚相談所特集と焚き火の楽しさを発信するブログ | イコロ

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アフィリエイトブログで婚活特集や焚き火の記事を執筆中しています。婚活は「年上狙いと子なし」が成婚の鍵と考え、里親制度の活用も提案します。焚き火は「親子で楽しむ薪割りと火の魅力」を伝えています。今後も読者のニーズに応え、多くの人に役立つ情報を提供してまいります。

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